アート

Art

Christian Boltanski

クリスチャン・ボルタンスキー

津波の犠牲になったひとりひとりの命の重さをおいて、震災を語ることはできない。
だが、日常において死は遠く、それが生きることと背中合わせであることに気づくことは難しい。
南三陸311メモリアルには、「死」がもたらす深い悲しみや痛み、命の尊厳について考えずにはいられないような小さなアート空間がある。
その空間を創り出したのは、世界的な現代美術家であるクリスチャン・ボルタンスキーである。
ボルタンスキーは東日本大震災直後の被災地を実際に歩き、三陸沿岸の惨状を心に焼き付けた。
生涯をかけて「生と死」、ひとりひとりの命の尊厳について考え、作品を作り続けてきたボルタンスキーは、津波で失われた多くの命とひとりひとりの人生を思い、人間と自然、時間をめぐる深い思考の中から、南三陸311メモリアル内の小さな空間のために詳細な作品設計図を2020年春に創り上げた。
2021年7月14日に急逝したボルタンスキーの思いを引き継ぎ、南三陸町は、その作品設計図をもとに、ボルタンスキーの作品制作を手掛けてきたアトリエ エヴァ・アルバランと作品制作を行ってきた。
クリスチャン・ボルタンスキーの“Memorial”は、「自然とは、人間とは、生きるとは」という問いを人類に投げかけ続けるだろう。

浅田 政志

Asada Masashi

写真家 浅田政志と南三陸町の人々との写真プロジェクトは、2013年秋に始まり2021年夏まで続けられた。浅田と住民たちが話し合い、アイディアを出し合いながら、それぞれの作品は生み出された。「震災で失った町をもう一度自分たちの手で作っていくんだという意志が、どの撮影現場にもあふれていた」と浅田は振り返っている。
家族や家、仕事場を失いながら、互いに支え合い生き抜く南三陸の人々。悲しみときびしい現実を前にしても、人は共に生きることで、決してあきらめることなく歩みを進めることができる。南三陸の人々は輝くような笑顔を通して、それを浅田に突きつけ、浅田は、「生きる力」を育て合う住民たちの姿を写真に焼き付けた。
「みんなで南三陸」と題されたこのプロジェクトの作品は47点にのぼる。南三陸311メモリアルでは、このうち19点を常時展示している。

浅田 政志

PROFILE

写真家。1979 年三重県生まれ。
日本写真映像専門学校研究科を卒業後、スタジオアシスタントを経て独立。
2009年、写真集『浅田家』(2008年赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。
2010年には初の大型個展、『Tsu Family Land 浅田政志写真展』を三重県立美術館で開催。2022年には『だれかのベストアルバム』を水戸芸術館で開催した。
パルコギャラリー、森美術館、入江泰吉記念奈良市写真美術館、香港国際写真フェスティバル、道後オンセナート2018、八戸市美術館、水戸芸術館等、国内外での個展やアートプロジェクトにて精力的に作品を発表している。