南三陸311メモリアルについて

About MINAMISANRIKU 311 Memorial

町長あいさつ

南三陸町長

佐藤 仁

Sato Jin

平成23年3月11日。
私たちは千年に一度と言われる未曾有の津波被害を経験しました。
あの日、防災対策庁舎の屋上から見渡した変わり果てた町の姿。
そこには地域住民たちの活気あふれる営みの場も、先祖代々受け継ぎ、共に創り上げてきた街並みもありませんでした。それは、絶望感と恐怖、そして悲しみに覆われた沈黙の光景でした。

生活のすべてを喪失するという極限の状況を経験した私たちは、かつてのふるさとを取り戻し、次の世代に希望ある未来を引き継がなければならないという一心で、ただひたむきにこれまでの日々を歩んできました。難題が山積する復興への道のりは険しく、時に挫けそうにもなりました。そんな時、私たちを支え、励ましてくれたのは、全国・世界中から支援の手を差し伸べてくださった皆様のお力でした。

「南三陸311メモリアル」は、地域住民の被災体験をもとに防災について共に考え、ふるさと再生にかけた私たちの思い、そしてご支援を頂きました多くの皆様への感謝の気持ちを、後世に伝え継ぐために整備した施設です。

全国各地で痛ましい自然災害が発生する度、私たちは心から思います。
人間は、自然の力を超えることは出来ない。だからこそ、日頃から防災について自分ごととして考え、備え、命を守る術につなげてほしいと。
「南三陸311メモリアル」でご紹介する私たちの経験が、世界中の皆様の命を守る一助になれば幸甚です。そして、命の尊さ、どんな苦難にも負けない心、笑顔を絶やさずに支え合いながら生きることの喜びを、南三陸町で体感していただきたいと考えております。
この施設を訪れる皆様ご自身が、自然災害がもたらす現実を見つめ、共に後世に伝え継ぐ証言者のひとりとなってくださることを願ってやみません。

失われた尊い命に哀悼の意を表すとともに、
ご支援くださった皆様への尽きることのない感謝を込めて。

令和4年10月1日
南三陸町長 佐藤 仁

ミッション

MISSION

  • LEARNING

    ラーニング

    南三陸311メモリアルには小さなシアターがあります。
    そこで住民たちの証言映像をご覧いただきながら、「もし自分だったらどう行動するか」をまわりの人と語り合いながら考えます。自分自身のこととして、自然災害について学び合う、南三陸311メモリアルのメインコンテンツです。
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  • ARCHIVES

    アーカイブ

    南三陸311メモリアルは継続的に、住民たちの証言や写真、映像などの震災関連資料を収集し、その記録を保存するとともに、その証言や収集資料から新たなラーニングプログラムや展示資料を創出します。
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  • FIELDWORK

    フィールドワーク

    南三陸311メモリアルにはアートを通して東日本大震災の記憶を心の眼で見つめるゾーンがあります。
    「自然とは、人間とは、生きるとは」に静かに思いを馳せる場です。
    また、オプションとして南三陸311メモリアルを起点とした震災の記憶を遺すフィールドへのツアーやさまざまな分野の学習体験ワークショップのメニューもあります。
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建築について 
〜隈研吾氏と南三陸〜

3.11から2年後の2013年からグランドデザインを描き始め、約10年間、南三陸町の復興に携わった。10メートルのかさ上げと大堤防で、海から切断された新しい人工的な地面を、海と大地とつなぎ直し、人間が住むウォーカブルで温かい街として再生させることを目標として、ストリート性と木(南三陸杉)をテーマとして、街を再建した。
そのまちづくりの集大成となるこの南三陸311メモリアルによって、海を見通すさんさん商店街(2017)の軸線と、海と直行する中橋(2020)の軸線とが縫い合わされ、海と山と川と街とがひとつの「輪=リング」としてつながり、街と人とがこの「輪」を通じて共振し、響き合う状態が生まれた。
複数の軸線とストリートをつなぐため、南三陸311メモリアルは人の流れを吸引する「孔」としてデザインされ、南三陸杉のルーバー材を「孔」の中心から放射状に配置したファサードは、その吸引力をさらに強化し、より強く、人と人、人と大地を接続する。
内部には震災の記憶を伝える品々、震災に触発されたクリスチャン・ボルタンスキーの遺作「MEMORIAL」、東京藝術大学の若いアーティスト達による作品群が展示され、震災という時間を過去に埋没させるのではなく、現代の問題として捉え続けることをテーマとしている。

Photo (c) J.C. Carbonne

癒しのコンテンツ開発プロジェクト

館内と外構には東京藝術大学のプロジェクトによる絵画作品などが設置されている。
隈研吾建築都市設計事務所から依頼を受けた伊東順二東京藝術大学COI拠点特任教授が、
若いアーティストたちと被災地に思いを寄せて作品制作を行った。

東京藝術大学COI拠点まちづくりのスマートビジョン(前文化外交・アートビジネスグループ)が行ってきた東北被災地の風景復興プロジェクト。震災から10年が経過し、震災から距離が生まれてきた状況の中で記憶の伝承と再生を進めるコンテンツ制作を行った。
プロジェクト・コーディネーター/伊東順二 Ito Junji

伊東順二 プロフィール
東京藝術大学COI拠点特任教授。プロジェクト・プランナー、プロデューサー。1995年「ベニス・ビエンナーレ」日本館コミッショナー。2005年〜13年富山大学教授。08年〜12年「金屋町楽市」実行委員長。前長崎県美術館館長。パリ日本文化会館運営審議委員。富山市ガラス美術館名誉館長。株式会社JEXT顧問。

■立体作品

  • ぬくもり(外構) /アルミ、ラップ塗装

    石村 大地 Ishimura Daichi

    1.作品コンセプトとして
    座って、触れて、楽しめる、大きな大きなウサギのソファー
    耳は大きく辺りを見守り、身体はゆったりリラックス
    座って感じる、あの日のぬくもり

    2.技法的アプローチとして
    この作品は、鍛金技法(当て金と金槌を用いた絞り技法)を基に制作をしております。アルミの板材を細かく切り出し、各パーツの形を合わせ、溶接を行い、一体形の作品としております。鑑賞が主となる、いわゆる「伝統工芸品」ではなく、より鑑賞者との距離が近くなる「実用品」をテーマとし、作品へと昇華致しました。
    実用品としての強度、安全性を考慮しつつ、自身の特徴である「うさぎ」、「ラップ塗装」を表現した作品となっております。

    プロフィール
    1991年 愛媛県生まれ
    2018年 東京藝術大学工芸科鍛金専攻 卒業
    2020年 同大学院鍛金領域 修了
    〜現在 東京藝術大学美術学部共通工房金工機械室 教育研究助手

■壁画作品

Re:Naître ―山里海

南三陸の自然の美しさから未来への希望を感じとってほしい。そんな思いから東京藝大出身の画家3名が制作した。
まず、南三陸町のリサーチを行い、魅力を体感しその後絵画制作を開始した。住民へのヒアリングや自然の調査など、南三陸の持つ資源をできる限りそれぞれの作品に取り入れた。幅20m高さ最大6mの大きな壁画となった。作品が設置される斜め壁の空間に合わせ、隈研吾建築都市設計事務所と協働し、3D技術を用い検討を重ねて制作を行った。

  • 【山】木漏れ日のような 時間(壁画:中央) /油彩・アクリル

    もり みこと MORI MIKOTO

    木漏れ日の中で子供たちが自然と戯れている。震災当時、私は中学生で、当時自分に近い年齢の子達の話を聞くと胸を打たれた。未来につづくもの、ずっと遺っていくものに思いを馳せて描いた作品。

    プロフィール/
    長崎出身。東京藝術大学 油画科修了。入学後、「傷」を自身の制作のテーマとして掲げる。

  • 【里】春の息吹(壁画:右) /油彩・アクリル

    竹久 万里子 Takehisa Mariko

    南三陸の復興を願い、春の優しい光の中に咲く花の絵を描いた。震災が起きる直前の南三陸町に咲き乱れ、春の到来を知らせていた梅の花、津波が来ても枯れることなく南三陸町の復興のシンボルになった椿の花…南三陸町は、数々の花で溢れる美しい《里》だ。自然が与えてくれる「優しさ」や「温かさ」を描くことで、失われた命や風景と向き合うことができれば、と考えている。

    プロフィール/
    1989年、東京に生まれる。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。東京藝術大学大学院美術研究科(油画・小山穂太郎研究室)修了。東京藝術大学COI拠点文化外交・アートビジネスグループ特任助手に従事し、社会基盤としての芸術の社会実装に向けた数々のプロジェクトに関わる。現在、鎌倉市川喜多映画記念館 学芸員。2022年夏より、カリフォルニアへ拠点を移し制作を行う。

  • 【海】ふたたび目醒める(壁画:左) /油彩・アクリル

    藤田 つぐみ Fujita Tsugumi

    魂についてはさまざまな捉え方があるが、この絵のなかでは魂が天に昇り、体を授かる前の光の中に還っていくイメージを魚群で表した。海底には子どもや生き物たちが光りながら生まれる時を待っている。海はいのちが循環する全ての存在において根源的な故郷だ。震災で突然の悲しい別れをした人たちともまた再会する日が来ることを祈り、自然が循環し続いていくように魂も巡りながら旅をしている様子を絵に収めた。

    プロフィール/
    1986年、広島生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。École nationale supérieure des Beaux-Arts Paris France留学。東京藝術大学大学院美術研究科修了。京都芸術大学専任講師。多次元世界や感覚など、他者と共有しがたい領域を視覚化し、イメージに置き替えることをテーマとして絵画制作を行う。

■映像作品

Re:Naître ―ふるさと

「Re:Naître」とはフランス語で「誕生・回生」を意味する。 南三陸で新たに芽吹く生命への讃歌を、日本舞踊の映像作品にした。建築家隈研吾氏が新設した「中橋」を舞台に、南三陸町の“記憶”と“未来”を表現している。舞台となった中橋は、上山八幡宮と南三陸町防災対策庁舎を繋ぐ。志津川の人々を見守る上山八幡宮と、震災遺構である防災対策庁舎の間で、海風、飛び交うかもめ、数分ごとに表情を変える山々の息を感じながら、今を生きる南三陸町の人々に思いを馳せる。

  • 監督 伊東順二 Ito Junji
    協力 隈研吾建築都市設計事務所
    振付・舞踊 飯森詩織 Iimori Shiori
    音楽 林そよか Hayashi Soyoka
    映像 新田みのる Nitta Minoru/新田てつろう Nitta Tetsurou
    制作 井上岳 Inoue Gaku/神楽岡久美 Kaguraoka Kumi/齋藤紗代 Saitou Sayo
    楽曲 ベートーヴェン ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2『月光』第1楽章
    林そよか 『おまもりうた』